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「ホント…ずるいよな。
日速はいつも俺の心に勝手に入って来る。
俺が言わなくても、お前はわかってくれちゃうだろ。だから…お前、俺のこと、色々知ってる。」
それは、否定できない…
「日速は俺のことを知ってるのに、俺は…お前のことを何にも知らない。俺が歩み寄っても、お前は俺を迎え入れてくれない。今は無理なんだ、今はまだダメだ、って、そればっかりじゃねーか。
お前は、俺の中にはズカズカ入って来るくせに、自分は俺を1ミリたりとも迎え入れない。
…それが納得いかないんだよ。」
「・・・・悠灯。」
ああ、悠灯の言う通りだ。
でも、今の俺では本当に無理なんだ。
今の俺のありのままを知れば、きっと悠灯は離れていってしまう…
(こわいんだ…)
俺はただ勘が冴えているだけだ。
悠灯のことを、本当のお前を、俺はまだまだ知らない。
悠灯が思っているほど、俺はお前のことを知らないのに。
(それでも、俺はお前に教えなさすぎだよな…)
自覚は、もちろんある。
「…俺が過干渉を嫌うのは日速も分かってくれてる。お前にも事情があるのもわかってるから、俺も干渉してこなかった、ずっと。」
悠灯のことを想って、過干渉をなるべく避けてきた。お互いにそうしてきたから心地がよかった。
でも、これは…
悠灯から、俺に歩み寄ろうとしている。
「…でも、あまりにもアンバランスだ。
俺だけ、日速のこと、なんにも知らないなんて。
・・・・こわいよ。」
きゅっと、悠灯が服の裾を掴んできた。
その手を、今すぐにでも掴んで引き寄せてしまいたい衝動に駆られるが、今は我慢だ。
「・・・不安になるだろ、ばか。」
あー、こんなにも俺のことで悩んでいてくれたのか…。
俺のために、普段は超えようとしない【干渉】のラインを超えようとしてくれている。
(嬉しい・・・)
悠灯が、そんな風に考えてくれているなんて。
「悠灯・・・」
悠灯が、俺にちゃんと向き合おうと、してくれている。
(やばい・・・すげぇ嬉しい…)
そして最後に言った、「ばか」ってのが、想像以上に可愛くて、もうだめだ。
俺の息子耐えてほしい。
俺の服の裾をつかんでいる手は、少しだけ、震えていた。
(・・・・うわ、マジか)
本気で抱き寄せたい衝動に駆られてしまう。
(頼む、空気を読め!俺の理性!)
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