LESSON:4 -another- ナグサメ(日速side)

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悠灯が俺に向き合ってくれるのは、とても嬉しい。 俺がずっとずっと、望んでいたものでもある。 だけど・・・ いくら悠灯相手でも、赤坂家のドロドロな事情に巻き込むのは、絶対に嫌なんだ。 問題大アリの、異常な家庭を見せて、お前の価値観を汚したくない。 (…傷つけたりしたくねぇんだよ) あまりにも異常だから、いくら包容力がすごいお前でも、引いてしまう。 「今日の迅と会った後だって、そうだろ。」 悠灯が追い討ちをかけてくる。 「・・・・それは、」 「…俺、そんなに頼りない? 俺にだって出来ることあるだろ。今までだって、いろんなお前を受け入れてきたのに。 …別に、お前の過去の傷を知って同情しようとかそういうんじゃないって、お前ならわかるだろ?」 俺の服の裾をつかむ手に力が少し籠った。 (お前が・・・頼りない?) そんなこと、絶対にありえない。 悠灯は、俺にとって、誰よりも頼りになる存在だ。 俺は何度も何度も、悠灯に救われている。 同情するなんて、悠灯の質じゃないのも分かっている。 どんな俺だって、「仕方ないな」って言いながらも受け入れてきてくれた。 本当に、本当に救われているんだ。 でも、今はまだ特別なことは何もしなくていい… 今は、俺を傍においてくれるだけでいい。 俺がまだ未熟だから、いけないんだ。 俺が未熟だから、悠灯のその気持ちを、受け止められきれないのだ。 (・・・悪い、悠灯) 悠灯をなるべく傷付けずに断りたい。 断るからには、傷つけてしまうことは避けられないが。 「とにかく…巻き込みたくないんだよ。 俺ん家…結構複雑だし。異常なんだ。 悠灯を嫌な気分にさせるの…嫌なんだ。」 俺の家庭は崩壊している。 両親も、兄も、そして俺も、みんな壊れている。 それが理由で、俺は家には帰らないのだ。 メンバー、先輩、悠灯の家に居候しているのは、あの家には居たくないからなのだ。 「それに…お互いに家のことを知っておく必要はあるのか? 俺だってお前の家とかバスケの事情はよく知らないけど、それを知ってどうこうしたいとか思わねーぜ。」 俺の発言に「ごもっとも」って顔をする悠灯。 そして、無力感を味わっているであろう表情。 (ああ…傷付けちまった…)
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