LESSON:4 -another- ナグサメ(日速side)

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あー、少し昔の話をしようか? 当時、生きる屍みたいな俺に、誰も手を差し延べてくれなかった。俺自身もそれを望んでいなかった。 だから、周囲から見離されるために俺は【鎧】を着たのだ。 近づきにくさを出すために髪を赤く染め、ピアスを開けた。 口調も、雑なものに変えた。 当たり前にように守っていた校則を意図的に破り、「劣等生」や「不良」を演じた。 必要以上に絡んでくる奴には冷たくし、目が合えば睨んだ。 ケンカも、たくさんしていた。 こうして、見事に落ちぶれることに成功した俺は、適当な私立高校を受けて、4月からそこに入学することになった。 …悠灯に出会ったのは、そんなとき。 出かけ先で偶然見つけた、夕日が綺麗な高台。 あまりにも、無垢なその夕日に、急に自分がみじめに見えてきたのだ。 カタチだけの【鎧】は夕日の前では意味もなくボロボロと崩れ落ちた。 そして、隠していた心の傷が、一気に開いてしまった。 壊れたように、涙が止まらなくて。 心はもうボロボロで。 ・・・が、そこには先客がいた。 それが、悠灯だった。 夕日の高台は、彼の秘密基地だったのだ。 色々あって(追々話す)、悠灯は俺に手を差し伸べてくれた。 俺が、望んでいないもの。 信じられないもの。 誰かから差し伸べられる手は、いつも黒くドロドロに汚れているように見えたから。 だけど…不思議だった。 悠灯から差し延べられた手だけは、この夕日みたいに、すごく輝いて見えたんだ。 同時にどうしても欲しく感じた。 ほかの奴とは何かが違うと直感した俺は、悠灯に拾われることを選んだ。 悠灯が 『何も言わなくていいから』 『そばにいる』 『大丈夫』 って…俺を抱きしめながら囁いてくれた時… 俺の心の中の、なにかの“枷”が外れたのだ。 何ヶ月もまともに生活していなかった俺は、 再び、眠れるようになった。 再び、ちゃんと飯を食えるようになった。 再び、ちゃんと目を見てしゃべれるようになった。 悠灯、お前は俺のスーパーヒーローなんだぜ…。 さて、昔話はこのくらいにしよう、悠灯が不安げに俺を見ているから、な。
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