LESSON:4 -another- ナグサメ(日速side)

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「…悠灯は俺を傍においてくれるだけでいいんだよ。俺はそれで満ち足りてる。」 「…ほんとか?」 それで俺は幸せだ。 「ああ。 だからもっと甘えろよ。 普段出してないお前を俺の前では見せろ。 悠灯こそもっと頼ってくれ。 わがままも言ってくれ。 …それで十分だ。」 悠灯は少し不満げだったが頷いてくれた。 この話題から、離れなくては。 悠灯をこれ以上、傷つけないために。 俺たちの関係の【綻び】が、これ以上露出しないように。 しばらく、無言が続いた。 悠灯は服の裾を離さない。 真剣なまなざしは、俺をその瞳に写し、逃がすことはない。 なんていう、熱い眼差し。 【あの日の夕日】が、俺を見つめている。 (オイ…期待しちまうぞ) 「…日速。」 少し掠れ気味になった声にドキッとする。 (・・・・俺を、見てる) 綺麗な琥珀色の瞳が、俺をそこに映している。 悠灯のなかに、俺がいる―――。 俺も、悠灯の琥珀色の瞳を見つめ返す。 ・・・視線が、絡まる。 「…悠灯。」 誘われるように俺も悠灯の名前を呼んだ。 上目遣いの涙ぐんだ、琥珀色の瞳。 繊細でスッと長い睫毛はふるふると震えている。 きめの細かい白い肌は、少し上気し赤く色づき、 パジャマから覗く鎖骨は男のものであるのに、どこか艶かしい。 潤った唇は、少し開き赤い舌が誘惑するようにちらりと時折顔を見せる。 (う…無自覚に誘ってんじゃねぇよ…) 真剣な眼差しを向けておきながら、あまりにも無防備な悠灯の姿に半分あきれてしまう。 そんな無防備なくせに、誘いやがって。 理性が持つ気が、しない。 (チッ…もう知らねぇ…) お前がそんな可愛いことするからいけない、と勝手に人のせいにする。 悠灯のパジャマを掴んで引き寄せ、形の良い三日月のような唇に、触れるだけの、キスをした。 (あー…やっちまった) なんて、悠灯の唇を、そのまま犯しながら、思ったりして。 いくら悠灯が弱ってるとはいえ、蹴られて当然なことをしていることは重々承知している。 さっき、それらが理由で蹴られたばっかりなのに、懲りない自分に、心からあきれてしまう。 しかも、悠灯が一生懸命に自分の気持ちを告げてくれた後に、こんなことするなんて。 (俺の、ケダモノめ…) でも、止められねぇ。 …さっきから、ずっとずっと、我慢してたんだ。 俺は、そこまでデキた人間じゃねぇんだ。
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