🆕プロローグ: 碧い風と旋律…そして僕等は出会う

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「そうは言ってもアルバイトだしまだまだ未熟だから…毎日ではないんだけどな」 「それでもライブに出てるなんてすごいよ!お店どこなの?聴きに行きたい!」 天使くんがキラキラした目で尋ねてくる。興味を持ってもらえたことが嬉しい。 「知らないかもしれないけど黒猫街ってところなんだ」 「あ…そこ知ってる……商店街のアンティークな感じのお店で…確か猫がモチーフの…」 「そうそう、よく知ってたな」 「実はこの辺を歩いていて気になって…調べてみたお店だったんだ」 こんなフルートが上手で、天使な美少年に「気になっていた」なんて言われたら、スタッフとしては嬉しい限りだ。 「ぜひ遊びに来てほしいな、俺は水曜と金曜のどっちかに吹いてるから…夜の7時半くらいからライブなんだよ、気に入ってくれると良いな」 天使くんの瞳がもっとキラッと輝いて、突然ガバッと元気よく顔を上げた。 「うん、行く!絶対いくよ!」 「うん、待ってるね」 その目の輝きといったら、すきなおやつをもらった猫の様で思わず顔がほころぶ。 「俺、小笠原 迅!迅って呼んで…!」 「俺は御子柴 悠灯、悠灯でいいよ。迅も高校で吹奏楽やるなら結構会うかもな」 天使くんは迅という名前らしい。 迅はとても嬉しそうに笑った、まさに天使の微笑みだ。 「必ず会うよ」 「え?」 迅はそのまま少し、意味ありげに目を細めると再び俺の手に触れた。 整えられた爪先が肌をたどってくる。こちらをアメジストの瞳で真っ直ぐに見つめて。 そんなことされたらドキドキしてしまう。 「…運命感じるから」 「運命?」 「うん、この風が吹いてたから…フルートの音をこの風にのせてみたくなった、この風が音をのせてくれたから俺たちは出会えた」 迅の指がするり…と絡みつく。細くて白い綺麗な指だった。 「あとは…悠灯が俺の音を気に入ってくれたから…かな、音楽で引き寄せられた運命の人なんだよ…きっと」 「そう…?」 よくそんな台詞をそんな顔で言えるな。恥ずかしくてさすがに赤面してしまう。 「まあ…俺つられるように来たし…迅の言う通りなのかもしれないな」 この風がなければ気が付かなかったかもしれない。 「だからね、すごく嬉しいんだ」 「俺も迅に会えてよかったよ、こんなにいい音聴けてしあわせだよ」 個人的には、今まで聴いてきたフルートの中で、1番「好み」の音だった。
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