太陽のたまご その16

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scene 16 【秋は実りの季節です】 『やぎさんゆうびん』という童謡がございますが、まさにそのような・・・なんといいますか『また聞き』で仕事をするのは本当に困難です。どうしてくれましょうな案件抱え中_(:3」∠)_ 「新作のスイーツ作ってみたんだけど、ちょっと味見してくれないか?」 お昼の混雑も緩和して、ようやく入った休憩時間。 仕事がお休みの日は・・・そりゃ手伝うって言ったからしかたないけど・・・たしかにそれでお家賃的なモノはかなりのお友達価格だし、日々のご飯の心配もないのだけど・・・それにしても忙しすぎる。 つい最近、国民的アイドル出演の番組とやらでテレビ局の人たちがこのカフェに来て、紫峰が新しく庭に作ったバーベキューのできるアウトドアも楽しめちゃうぞー的な施設を使って、なにやら撮影していったのだ。 こんな自然豊かすぎる土地で、野菜などの材料を自分たちで集め、おいしいお弁当を作るってコンセプトだったらしいけど、その中心にいたアイドルの男の子・・・そーゆーの興味ないから名前なんて忘れちゃったけど、どことなくマサキに似ていて、ニコニコと太陽みたいな暖かい笑顔を振りまいていたっけ。 そのアイドルを守るように周りに侍るお笑い芸人たちが、お姫様と従者みたいで・・・ちょっと面白かったからオンエアも見てみようかな・・・なんて思っていたところまでは良かったと思う。 いざ、オンエアされた日から、営業時間やら予約やらの問い合わせが殺到し、週末ともなると押し寄せるお客様対応でてんやわんや。 普段の本業(忘れかけてるけど、本業は郵便局の社員なの)よりも忙しい『おうちのお手伝い』は、「イケメン店長」「笑顔の宝石箱な店員」「特段技量があるようには見えないのに抜群に美味いコーヒーを淹れるオジサン」の3人構成ではとても間に合わず、今日も非番日だというのにランチの開店から働きづめだったから、休憩室のテーブルに突っ伏してグダグダしていたところ・・・初めのセリフに戻るって話で。 「紫峰・・・・ちょっと休憩させてよぅ」 「ああ。ごめんな、和。疲れてるだろうから甘いもの・・・ってのも安直なんだけどさ。あの人たち、ぜんぜん役に立たねぇんだもん」 「・・・・・・・・ん。・・・でしょうね」
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