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大体さ、あの人達に聞いたところで答えは決まっているでしょうに。
マ「しーくん!!これすっごーくオイシイねっ(*´◇`*)♪」
紅「やっべ!チョー旨いんですけど!!」
蒼「んま。よく出来てんなぁ…コレ」
………てなところでしょう?
「アイツら何食わせても「うまい」しか言ってくれないんだよ。そうじゃなくてさ、意見が欲しいって時は、やっぱり和じゃないと…」
だからお願い!!なんて手を合わせちゃって……案外カワイイところあるんだよね、紫峰クンは。
「分かりましたよ。いただきます」
そう言ってお皿を取れば、ストイックイケメンは、まるで子供のように笑った。
コレはモンブラン系のスイーツで……なんて、紫峰の講釈を聞きながら、濃厚な栗のクリームとサックリとしたパイ生地にフォークを入れたその時、目の前の椅子にマサキが腰かけ、頬杖ついてニコニコと俺を見つめはじめたのだ。
「んふふ。かぁず、おいし?」
「いや……今から口に入れる所なんですけど」
そんなことは関係無しに、マサキの話は続いていく。
「花園の近くの森にも大きな栗の木があってね。秋になるとリスさんがたくさん運んで来てくれるの。キツネさんと…あ、クマさんもね。みんなで仲良く分けあって……」
クマ?……クマって。
一体どんな場所なんだよ花園ってば。
「ふーん…あ。オイシイ、これ」
マサキの話を聞きながら頬張ったそれは、優しい甘さが口いっぱいに広がって、豊潤の秋を感じさせた。
「ホント…オイシイよね……でも…この秋は………あの子達、お腹空かせてないといいんだけど…」
「秋が…どうかしたの?」
「…え?…あぁ、何でもないの!秋は実りの季節だよね!って話!!」
慌てて言葉を濁すマサキ。
花園でもたくさん採れるはずの栗の実なのに、お腹を空かせて…だなんて、おかしな話だろう?
「…ねぇ、マサキ?なにか……」
「あ!まだテーブル拭いてなかった!じゃね、かず。ごゆっくり~!!」
突然立ち上がった彼は、カフェの方へと走り去ってしまう。
アイツは絶対なにか隠してる。
どうして話してくれないんだろう?
信用されていないのだ…という思いが、悲しみから違うモノへと変わってしまいそうで…。
俺は、ぶるりと震えた身体を必死で擦ったのだった。
scene 17へ続く
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愛情と愛憎は…紙一重だからね…(蒼麒)
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