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慎一は最後の力を振り絞る。
視線を上げた。
『ん?』
視界に何かが飛び込んでくる。スバメほどの大きさの影。
それが慎一の顔にぶつかった。
視界を奪われ、バランスを崩す。普段なら苦もなく体勢を立て直していただろう。
しかし、バケツをひっくり返したような雨。傘を差しながらの不安定な片手運転。濡れて身体に絡みつく服とズボン。奪われる体温。全てが動きを妨げる。
前輪が滑り・・・
ベチャ。
慎一は濡れた道路にヘッドスライディング。むっと口元を固くして、アスファルトを見つめる。全身が破壊的に水浸しになっていた。今更どうにもならない。
傘は近くに落ちている。自転車は倒れていた。
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