予期せぬ再会

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「フロイ!!右方向から回り込め!!」 「ぅだぁあ!!後輩のクセに指図するなっス!!」 ハースから言い渡された初任務まであと二日と迫った頃、ゲインの訓練は日を追うごとに苛烈になっていった。 基礎体力の向上から始まり、昨日までの間に個々の戦闘技能の改善、そして今日は二人のコンビネーションの訓練。 この組織に加入してそれなりに訓練を積ませて貰っているが、教官を引き受けてくれているゲインに対して有効打を一撃も入れられないでいた。 「お前たち…ガミガミ言い合ってないで、少しは訓練に集中しろ」 勿論普段からこんなにフロイと言い合いながら訓練している訳じゃない。 先程も言ったが、ゲインに一撃も入れられていない事から、俺たち二人とも任務に焦りを覚えて思慮が浅くなっていたのだ。 そして、そんな俺たちを見て、ゲインは堪らずため息を零す。 「ちゃんとやってるだろうが!!」 そう叫びながら己の武器である黒い刀に魔力を流し、紅い雷を付与する蓮。 雷鳴を響かせる刀を背に隠すように水平に構えゲインへと走っていた。 その反対方向から、フロイも剣を構え走る。 「挟撃か…。確かにその戦法を教えたのは俺だが、もっと捻りを加えろお前等」 まるでダメだと言うように頭を振り、カツンッと地面を踏みしめる。 瞬間、走っていた二人の足元が突如隆起し、槍の形を形成し襲って来た。 「だから卑怯だろ、それ!!」 「戦場に卑怯もクソもあるか?」 悪態をつきながら咄嗟に横へ跳び避ける俺と、その場でゲインに向かって跳躍し避けると同時に、一気に距離を詰めようとするフロイ。 詠唱もせず、挙句には術の名前すら口にしない。 本人曰く、土系統の初級魔術らしいのだが、それでも術名を口にしないのでは、こちらは何の術か全くわからないのである。 現に、この術によって何度も敗北を喫している蓮とフロイにとっては、目の敵の様に術後に飛び出してきた槍を睨んでいた。 「でぇぇぇぇい!!」 威勢の良い声を張り上げ、空中で剣を振りかぶっているフロイに向かって、ゲインは手に持っていた武器で仕掛ける。 一見すると分銅鎖のようだが、本来分銅があるべき鎖の端は鋭く尖っており、魔力を流す事で浮遊させ自在に操る事が出来る武器だ。
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