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一連の話を聞いていたハースは、そのやり取りを見て微笑んでいた。
「料理人の中でも、君はかなりの偏食家だと噂されてるぞ。……朝は毎日、今と同じモノを頼んでいるのか?」
「まぁな。…日本食が恋しい時期なんだよ、今は」
蓮の一言にハースは小さく頷いて朝刊に目を落とす。
しかしこのハースと言う人物、中々に掴めない人間である。
フロイやゲイン、ルリにそれとなくハースについて聞くのだが、そのどれもが大抵組織を束ねるリーダー像からかけ離れた人間であることが分かりつつあった。
他人と何処かずれた感性を持ち、何を考えているのか悟らせず、不愛想と言う訳ではないが腹を抱えて笑った所を見た事が無い、等々。
因みに、ルリにハースのことを聞いたとき、俺とよく似ていると言っていたが、果たして似ているのだろうか?
「なぁ、質問いいか?」
「なんだ?」
元々話をしないかと持ち掛けたのはハースの方だった。
俺から話しかけても大丈夫だろう。
「普段、英雄たちとはどう接しているんだ?…俺の場合、構ってくれと五月蠅かったり、大事な時にコンタクトを取れない時があるんだが…」
「ほぉ。君のスティグマに宿っている英雄は、何とも自由人らしいな…。しかし、私の場合か…。主要な作戦を話し合う際や、今後の方針を相談する時にこちらから呼びかける事が多いな。あちらからも、何か気づいた点、助言があれば逐一指摘してくるし…。まぁ、君の場合は少し事情が異なるからな。それに今は、君の英雄だってアブソーバー事変の真実を明かされて混乱しているのだろう。フロイやルリの時もそうであったし、少し時を待つというのも一つの手だと思うぞ」
「やっぱり、そういう間柄がベストだよな…。お互い依存しすぎるのは良くないし…。そこら辺の駆け引きが大事ってわけか…。しかし、やっぱりあの事件の真実を聞かされたのがショックなんだろうしな…」
本当、アイツがしょぼくれてる姿なんて、らしくないにも程がある。
素直に感情を示す方が、ソルヴィらしいと言えばソルヴィらしいのだが…。
しかし、やはり今まで一人でいた時間が長かったせいか、そうなった原因であるあの出来事が、天界によって捻じ曲げられた歴史になっている時点で、アイツの精神的動揺も計り知れないわけで…
(あぁ~、ダメだ。朝からこんな頭働かしていられるか…)
思考を巡らせるのに早速降参した蓮の前に、丁度朝食が運ばれてきた。
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