学園への介入者

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「やっぱり地力が違いすぎる…。いや、それ以前に経験の差がありすぎるのか…」 三人の奮闘を眺めているエドは顎に指を添えて必死に思考を巡らせていた。 動きを目で追ってはブツブツと呟いているエドに、フェルトは意外そうな顔をして声をかける。 「さっきはらしくなかったじゃない。いきなり三人に戦術を丸投げするなんて…」 フェルトの声に一度視線を訓練から外すと、一息ついて肩をすくめる。 そのまま、エドは苦笑しつつ口を開いた。 「正直、ここから先の戦場、僕はお荷物になるからね」 「荷物?いきなりどうしたのよ。あの三人だって、戦術の面ではまだまだアンタに頼りっきりじゃない」 「違うよ、フェルトちゃん。それはつまり、あの三人の成長の機会を僕が奪ってるってことだ。……それに、いい加減僕も諦めがついたよ。あの三人の訓練を見せられたら、僕の実力じゃこれ以上肩を並べて戦うことはできないって」 「それは――」 "違う"と言おうとしたフェルトだが、エドは首を横に振り、見かねたミズキがフェルトの袖を握って発言を遮った。 「僕の実力じゃ、ここら辺が頭打ちなんだ。……今までは小手先の技術や機転でどうにかなったけど、あの三人を追いかけていけるほど、僕には才能がない」 「才能って、そんな言葉で片付けられたらあの三人だっていい顔しないわよ?第一――」 「違うんです、フェルトさん。エド君は別に投げやりになってるわけじゃないんです。エド君はエド君なりに、自分に出来る事をしようとしているだけなんですよ」 「ミズキまで…」 「心配しなくても大丈夫だよ、フェルトちゃん。だからこそ、僕はこっちでみんなを支えられるようになりたいんだ」 エドはコツコツと自信の頭を指でつつき苦笑する。 フェルトは何か言いたげに口を開いたが、言葉の慰めを必要としていないことに気づいて、結局言葉を飲み込んだ。 「こっちでって…。ならさっきこそアンタの戦術や知恵を三人に伝えるべきだったんじゃないの?やってることがちぐはぐよ?」 「それはまぁ、あの三人にも経験を積んでほしかったってのが一つかな。僕の戦術は、あくまで僕が"見て"考えた、いわば"現場を知らない人間の知恵"だ。それはこの先の戦いで、きっと足を引っ張る」 「……実際に剣を交えて得られた情報を戦術に組み込められないって事?」 「そういう事。だからこそ、あの三人には戦いながらでも戦術を組み立てられるようになって欲しいんだ。現にさっきのウォルカの攻撃も、ナギサさんの言う通り使い古された"目潰し"だ」 「でもいきなりそんな…。今までアンタにおんぶにだっこだったアイツらや私らに、そんな事を出来るようになれって言うのは…」 「訓練だからいくらでも試せるだろう?英雄たちの言う通り、平時だからこそ備えておくべきだ。……僕も、僕にできる事をするさ。戦術ではなく戦略を組み立てられるようにね。戦場を盤に見立て、君たちをどう動かせば最も効率的に、犠牲を出さずに目標を達成できるのか。後方でふんぞり返る能無しの指揮官にはなりたくないからね」
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