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フェルトはそんなロッティを抱きしめ背中を摩り、安心させるように優しく話しかける。
「アイツがそんな薄情者なわけないでしょ?そんな事、恋人のロッティが一番分かってるじゃない」
「でも…なまえも…しらなかった…」
「ッ…ち、ちがっ…!!それは違うわ、ロッティ。アイツにも事情があったのよ。ロッティを巻き込みたくなかったから、本当の事を言えなかっただけよ」
幼少の頃、両親を殺され自棄になりかけていた頃、寸でで自分を繋ぎ止めてくれたロッティ。
こうして、目の前で崩れるロッティの手を取るのは自分だと思い抱きしめたのだが、既にロッティの心の大半は蓮への想いで埋め尽くされていたらしく、その手をずっと取っておくことは出来そうになかった。
せめて、今この時だけはその不安を取り除こうと、ロッティを抱きしめる。
(いつの間にか、アイツの存在がロッティの中で大きくなっていたのね…。一体、どこで何やってるのよ、蓮)
フェルトはロッティの頭を撫で、時折聞こえてくるロッティの嗚咽に、悔しそうに唇を噛み締めた。
それは大事なロッティを取られたという思いの表れではなく、自分を助けてくれたロッティに対して何も出来ない自分の無力さを悔いている顔だった――…
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