じゃあね。

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「…………」 「…………」 会話が途切れる。 ……そして…… プァーーーーー と電車の汽笛が鳴ると同時に電車は駅に到着した。 「……じゃあ、行くね」 「あ……」 彼女は立ち上がる。 彼も立ち上がる。 「じゃあねっ!」 「待って!!」 彼女が電車に乗る手前で彼は叫ぶ。 「最後に……聞きたい事がある……」 「…………」 「どうして今まで成仏しなかったんだ……?」 「…………」 彼女は言った。だけど電車の汽笛でその声は聞こえない。 彼女は笑う。 ニコリと微笑む。 彼は涙する。 ニコリと微笑み返す。 そして彼もまた言う。 「俺も好きだった……ずっと……好きだったよ……麻奈美……!」 涙を流し膝から崩れ落ちる。そこに彼女の姿はない。電車も、もういない。 彼女は逝った。 もう会えない所に逝ったのだ。
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