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液晶画面に映し出されていた文字に焦点が合わず、後ろにさがったり、前に近づいたりと繰り返していると啓君がヒョイッと携帯を自分のもとに戻した。
「現地集合する。」
「あへ?」
いきなり、冷たく発せられた啓君の言葉の意味が全くわからず、変な声を出してしまった。
「あぁ。現地だねオッケーオッケー。」
私は呆れ返ってる啓君の顔色を伺いながら、あははと笑った。
「次だよ。本落ちてるけど。」
私はすっかり啓君に会えた喜びに浸っていたため、カバンを落としそうになったとき本を落としていたことに気づかなかったみたいだ。
「あ。ありがとう・・・。これ借りた本だから・・・。きっと気付かずに踏んでたら大変なことになってたなーあはは。」
啓君は微笑みながら立ち上がった。
プシューっと音が鳴り、バスが走り出したのを見ていると、啓君は歩いていってしまっていた。
***
大きなショッピングモールの中庭の、ベンチに座っていると裕君がやってきた。
啓君は、映画を見る約束を断った友達に見つかってしまい、わびるつもりなのか、映画を見に映画館へ行ってしまった。
「今、啓志から『映画見に行く。一応蘭一人だから早めに行けよ』ってメールきて急いできたんだ。」
確かに裕君は、手を膝につきながら息を切らしている。
「そんなに急がなくてもよかったのに・・・。私1人でも寂しくないし・・・。」
私は上目使いで言うと、そういうことじゃないんだけどな・・・。と裕君はつぶやいた。
「じゃあ、いこっか?」
裕君は私の返事も待たずお店の中に入って行ってしまった。
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