41人が本棚に入れています
本棚に追加
「ーーーっーーて」
「!?」
今度は確かに声が聞こえた。
それも、背後から。
恵子は、恐る恐る背後を振り返った。
だが先程と同様に、目の前に拡がるのは暗い夜道だけである。
恵子は恐怖にかられ、振り向くや否やその場から走り去った。
本能が身の危険を感じていた。
「ーーーわーせて」
また、声が聞こえた。
しかも……徐々にはっきりと。
「ちーーーわせて」
声は、いくら走っても聞こえてくる。
しかも徐々に声との差が詰まってきているような錯覚さえ恵子はおぼえた。
恵子は、声の正体を知ろうと振り向きたかった。
しかし本能がそれを邪魔しており、前を見て走り続けることしか残されていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!