―嬉々―

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「……へぇ、そのままでも良いんだ?」 「構わねーッつってんだろ。こんぐらいの傷、いつだって放置してきた」  俺は荒く脱がされた学ランに手を伸ばす。カラーTシャツは千切れて死んだ。血塗れだったし別に良いがな。 「……アンタ、怪我ナメてんの?」  ガスッ、と。学ランに伸びる俺の手の甲を、立ち上がった貧乳が刀の鞘で押さえる。  刀なんてどっから出した? そう考えるより先に、奴は冷ややかな目で見下ろしながら口を開く。 「アンタが思ってる程軽い出血量じゃない。加えてナイフか何かで近距離に作られた斬り傷、来週には余裕で腐ってるわね」 「……あん?」 「確かに私は医者じゃないわ。でも悪いけど、アンタのちっぽけなプライドなんかより誇りはある」 「だからどうした。こんくらいじゃ死なねえだろうが」 「死なない? 関係無いわね、五体満足だからそんな事が言えるだけ。馬鹿にするのも大概にしなさい。それとも──」  甲を押される力が強くなる。 「〝和都の人間に治されるのは嫌かしら〟」 「はぁ? ワト? なんだそりゃ。関係ねえだろ、俺はお前が気にくわねーんだ」 「え……?」 「……あん?」  互いに疑問の声を漏らす。同時じゃない。俺は女が驚いた事に疑問を浮かべた。  先に表情を変えたのは、高圧的な雰囲気を崩したのは、あっちだ。 「んだよ。またなんか気に障ったか? 怒り易い奴だなテメェは」 「……」  じっ、と。睨んでいた眼が、観察するような眼に変わった。  染めた訳でもなさそうな、鮮やかな橙色のポニーテールが揺れる。 「……アンタ、出身は?」 「ほりあ」 「フォリア、ね。無様な程に滑舌悪い」 「テンメッ……!」  刀を外した女に向けて、立ち上がり詰め寄ろうとした矢先だった。    -Azure seal- 「……〝水の真心〟」  俺の身体が、青い光に包まれる。水の中に入ったような感覚と、何か優しい温かさに包まれた。 「い……っ?」  みるみる、だ。  本当に、見れる速さで。  中々に凄惨たる有様だった自分の肉体は、時を刻む程に治癒されていく。最早再生と言った方が近い。
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