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特に問題視をしていたわけじゃなかったが。
俺がクラスメイト全員を襲った次の日。寝惚けた思考で緩やかに教室へと向かっていた俺は、仁王立ちしながら教室棟前で待ち構えていた教員共に、連行するが如く学園長室へと連れていかれた。どうやらクラスメイトへの魔法攻撃は問題、というリオネの反応は正しかったらしい。
待ち構えていたのは魔法学園学園長、バトラ=アリスベルン。ルーイをして文武両道の傑物と言わしめた女は、黒に近い長髪を後ろに束ね、銀のメガネを押し上げるあたかも優等生然とした佇まいではあったが。
「私の責任が増えるようなことをするな。以上」
優等生の殻を被って問題発言をくれやがった。生徒の半数近くが貴族の血筋であるこの学園において――言うなれば気品や格式が重要視されそうな環境であるにも関わらず、こうも人格に難のある人材を学園長として登用するあたりが、いかにも実力社会だという異世界性を感じさせる。
眠さを押して通学してきた挙句に問答無用で連行され、テキトーな返事と心無い謝罪を述べさせられた俺に一日への活力など残っている筈も無く。教室に戻れと言う学園長の言葉に従いつつも従わず、学園長室を出た足でそのまま、時計塔を登りサボることにした。
「やあやあ、おはようトビ君」
「……頼むからよ、ゆずっちゃくれねーかこの場所」
「なんで? 別に一緒に使えばいいじゃない」
「友達みてえなこと言ってんじゃねえ」
「寂しいこと言うなあ。クラスメイトなのに」
青い制服の女生徒は、昨日と同じツィンネの凹に腰かけていた。そしてまるで見透かしたように俺の来訪を喜んでいるような言葉を出していた。
始業の鐘が鳴る。轟音も轟音。反射的に頬の筋肉が上がり嫌悪の表情が出来上がるが、目の前にいる女はけろりとした表情で、楽しそうな目を俺に向けるばかりだ。
「……クラスメイトだろうがなんだろうが、苦手な奴と仲良くしなきゃならねえ決まりはねえ」
鐘の音が止み、昨日と違い俺はシャオと向かいあうように壁にもたれ腰かけた。座る両ひざに両肘を乗せ、両手を両頬に沿えるシャオは、どこか余裕の表情で言う。
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