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──おい! 大丈夫か、おい!
──なんだ、どうした?
──ちょっと来てくれ! 行き倒れだ! 見た事も無い服を着た男だ!
──行き倒れ……? おいおい物騒だな。生きてるか?
(っ……? なんだよ、うるせェな……)
──息はあるし、健康そうだが……お、目ェ覚ましたか?
(……は?)
〝俺は目を覚ましたらしい〟。
誰とも知らない奴の声が、それを教えた。不思議と、目を開ける感覚も久し振りだと思ってる。
視界に入ったのは、林に突き刺さる月の明かりだった。
「おーい。兄ちゃん、生きてるかぁ?」
「っ……ここは?」
「場所か? 村外れの林だよぉ」
うーわ……情けね。林で寝てたってのか。それもこの町の人間に起こされるなん──
……?
〝村〟?
「……あー、悪いオッサン。ド田舎なのは認めるけどよ、ここ村だったのか?」
「なんだい、兄ちゃんやっぱ旅人かい? 道理で見慣れねぇ召し物だと思ったよ。こかぁランカの村の外れだ」
……あァ? ランカ? なんだそりゃ、急に村になって妙な名前になったってのか? 意味分からん、つーか誰だよこのオッサンは。
「……って」
「どしたい兄ちゃん」
ようやく上体を起こした俺は、ようやく俺を起こした奴の姿を見て、ようやく驚愕する事が出来た。
どう考えても、どんな職業でも、現代に住む奴が着る服では無い物を着る男が二人、そこに居た。
俺の服装を否定する事に頷けるような違いが、そこにはあった。
そしてその、男達の指。
夕暮れから夜へ、詰まるところ辺りが暗くなり初めていた空間を、
照らしていた。
ライトの類ではなく。
男の指に灯る、橙色の何かが。
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