―嬉々―

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     * * *  ──おい! 大丈夫か、おい!  ──なんだ、どうした?  ──ちょっと来てくれ! 行き倒れだ! 見た事も無い服を着た男だ!  ──行き倒れ……? おいおい物騒だな。生きてるか? (っ……? なんだよ、うるせェな……)  ──息はあるし、健康そうだが……お、目ェ覚ましたか? (……は?)  〝俺は目を覚ましたらしい〟。  誰とも知らない奴の声が、それを教えた。不思議と、目を開ける感覚も久し振りだと思ってる。  視界に入ったのは、林に突き刺さる月の明かりだった。 「おーい。兄ちゃん、生きてるかぁ?」 「っ……ここは?」 「場所か? 村外れの林だよぉ」  うーわ……情けね。林で寝てたってのか。それもこの町の人間に起こされるなん──  ……?  〝村〟? 「……あー、悪いオッサン。ド田舎なのは認めるけどよ、ここ村だったのか?」 「なんだい、兄ちゃんやっぱ旅人かい? 道理で見慣れねぇ召し物だと思ったよ。こかぁランカの村の外れだ」  ……あァ? ランカ? なんだそりゃ、急に村になって妙な名前になったってのか? 意味分からん、つーか誰だよこのオッサンは。 「……って」 「どしたい兄ちゃん」  ようやく上体を起こした俺は、ようやく俺を起こした奴の姿を見て、ようやく驚愕する事が出来た。  どう考えても、どんな職業でも、現代に住む奴が着る服では無い物を着る男が二人、そこに居た。  俺の服装を否定する事に頷けるような違いが、そこにはあった。  そしてその、男達の指。  夕暮れから夜へ、詰まるところ辺りが暗くなり初めていた空間を、  照らしていた。  ライトの類ではなく。  男の指に灯る、橙色の何かが。
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