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「何でオレが捜査に加われないんですか!」 七色警察二階刑事部、フロアを戸棚で区切っただけの粗末な部屋いっぱいにオレの叫びが響いた。 「どれだけ来ても同じだ。お前がこの捜査に参加する必要はない」  デスクにふんぞり返った髭のオヤジは、オレにきっぱりと言い放った。 「お言葉ですが、片平副署長。警察関係者が帰宅中に暴行を受け、さらに記憶まで失わされた事件なんですよ。これは、国家に対するテロと同じじゃないんですか。国家はテロに屈したんですか!」  ちょうど一週間前、この七色警察署の管轄で、この世の出来事とは思えないような、恐ろしい事件が起きたのである。犯人は未だに逃走を続け、目撃証言すら集まっていない。   普段は交番勤務のオレも、この国家の一大事に黙っていることなどできなかった。だからこうして、役職を飛び越えて捜査する権利を求め、山之上交番から七色警察署へ講義に来ているのである。 オレの熱い思いに副署長の心が揺れたのか、片平副署長が姿勢を正しオレをまっすぐに見つめてきた。 「あほか」 「え?」  今、オレの想像と180度違うセリフが聞こえたような。  いや、聞き間違いだ。  そうに決まってる。 「あほか。と言ったんだ。自分を的確に表す言葉だ、よく聞こえただろう」  どうやら、気のせいではなかったらしい。  何で副署長はこんな言葉をオレに? 「岸(がん)上(じょう)英(えい)一(いち)朗(ろう)巡査」 「はい!」  警察学校を卒業して二年経たないせいか、オレは名前を呼ばれるだけで姿勢を正してしまう。 「何が国家に対するテロだ! お前の言ってる事件は、事件じゃない、事故だ」 「事故だって? あれは事件です」  断言するオレに、副署長が長いため息を吐く。 「お前の姉さんが帰宅途中に署内の階段から落ちて、その日の記憶を失くした事故がか?」 「そうです、あれは事故なんかじゃありません。姉さんのストーカーが起こした事件に決まっています」  副署長がさらに長いため息を吐いた。 「確かにお前の姉さんである岸上テレサは、この七色警察署に勤務していた。だから、警察に恨みを持つ者の犯行も疑われるからと、十分な捜査もした。お前の言うストーカーの仕業説だって、何の根拠があって言っているんだ?」
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