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「それはテレサ姉さんが、世界で一番美しいからです」
マザーテレサの生まれ変わりと称されるくらい心優しく、署内にファンクラブができるほど美しい、まるでこの世の女神のような姉さん。
人を疑うことを知らない姉さんが、ストーカーに付け狙われていたとしてもおかしくない。
オレの姉さんは、この七色警察署内で、毎日数え切れないほどの事件を扱う警察職員の心のケアーを行うためカウンセラーとして働いている。
その帰り道に事件に巻き込まれ、現在自宅療養中なのだ。
「ふぅー、 事故は署内で起きたのに、どうやってそのストーカーが入り込むんだ。いや、お前に何を言おうが無理だな。仕方がない。おいっ」
副署長は、さらにさらに長いため息を吐くと、片手を挙げて誰かを呼んだ。
きっと署長を呼んで、オレを捜査に加えてくれるよう頼んでくれるんだな。
「副署長、ついにオレを認めてくれたんですね」
姉さんのことを、世界で一番分かっているオレが、事件の捜査をできないはずがない。
しかし、うすい壁の向こうからやってきたのは、二匹の巨大な熊。ではなく、熊に間違うくらいゴツゴツしい特殊警備隊のお兄さんたち。
……、あり? 何で?
「こいつを元の山に帰してきてくれ」
「YES、副署長」
お兄さんの敬礼がぴったり揃う。
「え、ちょっと待って、」
そのまま両脇を熊のお兄さんに抱えられるオレ。
「今は、重大な事件の山場なんだ。こんな大事な時期に、お前に勝手な行動をされてはいかん。お前は、元の交番勤務に戻れ」
副署長の合図で、オレは部屋から放り出されてしまった。
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