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「あー、くそ。何でオレが姉さんの事件を捜査できないんだよ。交番勤務だからってなめてんな!」
オレは、食堂のテーブルに行き場のないイライラをぶつける。
「ああ、腹が立つー」
七色警察名物七色納豆を、怒りにまかせてかき混ぜる。七色に色づけされた納豆は、混ぜると茶色に変化した。
よく思い返せば、姉さんの事件が起きた日もそうだった。
オレは、事件を聞きつけて、山之上交番から全速力で駆け付けたのに、結局、邪魔になるからと副署長に署内から放り出されたんだ。
「警察は、国民の宝である姉さんの扱いをもっと厳重にするべきだ」
姉さんは、あの事件のせいで、事件直後の記憶どころかその日一日の記憶を丸々失ってしまった。
世界一清らかな姉さんの一日が、失われてしまったなんて、この世の不幸だ。
「なんでそれが分からないんだよ!」
オレは、かき混ぜたことによって七色が茶色になってしまった納豆を、どんぶりの白飯にぶっかけてほおばる。
うん、ブルーベリーの酸味が効いていて旨いな。
「山之上交番に帰るのが、そんなに嫌かい?」
オレの隣に、おもむろに誰かが座った。
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