あなたを見てる☆

5/24
前へ
/24ページ
次へ
「あ、署長。おはようございます」  白髪頭の渋い二枚目親父、この七色署で最も権力を持つ男だ。笑顔で犯人を追いつめる、通称スマイルキラー。 「はい、オレは姉さんの事件を解決したいんです。姉さんが、調書のように、階段で足を滑らせてしまったなんて考えられません」  姉さんは、確かにおっちょこちょいなところもあるけれど、雨も降っていないのにあんな所で足を滑らすはずがない。 「そうか、では、君がここに残って捜査ができるように協力してあげよう」 「本当ですか! 署長」  ここに、神が舞い降りた。 「その代わり、交換条件がある。何、簡単なことさ」 「はい、オレ。何でもします」  降って湧いた奇跡に手を合わせる。 「はは、心強い」  オレの熱い思いに、署長が共感してくれるなんて。世の中には、捨てる神あれば拾う神ありだな。 「では、この子のことよろしく」 「へ?」  署長は、おもむろに自分の隣に座っている少女を指した。『一日警察署長』というタスキをかけている。  いつの間に、いたんだ? 「一日警察署長のテリーちゃんだ。今、日本で一番人気のあるアイドルお世話が見られるなんて、嬉しいだろう」  警部に肩を豪快に叩かれる。 「い、いえ。申し訳ないですが、ダレですか?」  オレの予想外の一言で、警部の笑いがピタッと止まった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加