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「ほら、今日はもうお仕舞い。あたし夕飯の支度しなきゃいけないから」
「いつもそれだよなー。頼むよ!…俺も師範みたいに強くなりてぇんだ!」
「媚びる時だけ『師範』とか呼ぶな!帰れっ帰れっ」
あたしはシッシッと犬を追い払う様に言った。
「なんだよ、バーカ!明日も来てやるからなっ!」
あたしは笑った。
「明日は休みだよーだ、おバカ」
「うるせぇ!ブスっ!」
太助は地面の砂をすくい取ると、あたしに思いっきり投げつけて、全速力で走り去って行った。
「ちょっとっ!」
「師範に砂を投げつけるとわ、かなりの度胸じゃな」
お祖父ちゃんは笑っている。
「ほんと、なんなのよあいつは」
あたしはいつも太助に構われる。
…もしやあいつ、あたしのこと好きだな。
「太助は桜のことが好きでしょうがないようじゃな」
お祖父ちゃんも同じことを考えていたみたい。
二人して笑った。
「さてさて、今日の夕飯は何かの?」
「今日はね、鰔の煮付けにしようと思って」
「おお、良いのう」
あたしはお祖父ちゃんの笑顔を見るとホッとする。
一人じゃないんだ…って安心出来るから。
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