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今日も蒸し暑い。
外に出ると、あたしはため息を着いた。
蝉がミンミン…と煩く叫ぶ。
あたしはいつも通り、公園の前で親友を待っていた。
…夢に見ていたのはこの公園にそっくりだったから、少し緊張する。
「おっはよ〓」
親友の佐由美。
いつもこの公園の前で待ち合わせて、一緒に学校へ行っている。
「おはよ、今日もバカみたいに暑いね」
「バカみたいって」
佐由美が笑う。
「だって暑すぎるよ」
今年も猛暑だ。
「だね〓…。『茹だる様な暑さ』って正にこんな感じだよね〓…」
「ね」
あたしはふっと公園の隅の方にある日だまりを見つめた。
夢の通り行動してしまう自分が少し怖かった。
胸騒ぎにも似た不安定な気持ち。それも夢の通りだ。
「桜…?行こうよ?」
その日だまりの中に何かが見えた。
…心臓の鼓動が蝉の鳴き声より煩い。
「うそ…」
…夢の通り、侍が倒れていた。
信じられなくて目を凝らすと間違えなく侍が倒れている。しかもその侍は夢の中と全く同じ格好をしている侍だった。
あたしは何故か助けなくちゃ…そう思う。これも夢の通りだ。
「ごめん、佐由美。先に行ってて。多分あたし遅刻すると思うから先生にもよろしく」
あたしはそういうと日だまりに向かって走り出した。
無我夢中で走り出した。
「ちょっとっ!桜!」
佐由美の声も蝉の鳴き声も何も聞こえなくなってた。助けなくちゃ…それしか考えられなくて。
「もう遅れるから本当に先に行くよ〓!」
「うん!」
佐由美からは木で隠れて見えないらしかった。
あたしにはしっかり見えてる。
吸い込まれそうに青い黒髪。紺色の着物に黒い袴を履いた侍。
息をするのも辛そうな侍の姿が。
…夢の中で見たままの侍の姿が。
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