幻惑

7/19
前へ
/136ページ
次へ
「…………。」 相手が見えない以上、どう来るのかもわからない。 美雪は周囲の気配を探りながら氣を集中させる。いつでも反撃できるように…。 「!」 背後に気配を感じ取り、素早く振り返る。 そこには男の姿はなかった…が、代わりにある人物が立っていた。 「!七志!」 美雪が名前を呼ぶ。そう…そこにはあの男ではなく、七志が立っていたのだ。 「七志…どうしてここに?」 「俺の行った道は行き止まりだった。だから引き返してこっちに来た。」 「そう…ん?」 別れた時、七志は木刀を持っていた。だが、今目の前に立っている七志は木刀を持っていない。美雪はその事に気付く。 「木刀はどうしたのかしら?」 「木刀…?ああ…あれは折れたから捨てた。そんな事より…何故そんなに殺気立っている?」 「敵がいるからよ。」 「敵…どこにも見えないが?」 徐々にだが、七志は美雪との距離を詰めてきていた。…美雪はまだ気づいていない。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加