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「なっ!?」
「ぎゃば…!ぎゃばばばばば!無駄だ無駄ぁ!貴様はもう逃れられんのだぁぁ!」
頭の左半分を失いながら、孝は驚く美雪を嘲笑う。
「あ、あれは孝の本人ではないの!?ッ!?」
突然、左腕に激痛が走る。
左腕を見てみると、肘から下が千切れていた。
「攻撃を受けた…!?まさか、これも幻術!?」
「その氷の壁がある以上、俺は貴様に手を出せん。然らば幻術をもって貴様の精神を砕く!」
「精神を…?ッああ!」
右目が弾け飛んだ。幻術とわかっていても、襲ってくる痛みは本物だった。
「貴様、俺の術を使う時の姿を見ていただろう?あの時既に、貴様は俺の術に掛かっていたのだ!」
「姿を見た時から…?」
その言葉を聞いて、美雪はこの幻術を無効化する方法に、僅かにだが手が届いた。
(見た時から…?見た瞬間…もしかしたら…!)
(あれは「これから使う」と思わせるだけで、その前から使っていた。そして、この幻術は単に相手に見せるモノじゃない…。相手の脳に直接イメージを流し込んでいるのだわ…。)
孝は美雪の脳に左腕が千切れたというイメージを流し、脳にそう認識させ、本物と同等の痛み…そして肘から下がなくなったと目に認識させていたのだ。
術を「今から使用する」と思わせ秘かに本命の術を使い、相手の網膜を通して脳を侵す…それこそが、孝の幻術の真の正体だった。
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