幻惑

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(今目の前にいる孝は幻…本体はこの空間のどこかにいるはず。気づかれては駄目…彼にバレぬように…。) 「きゃあぁぁ!」 苦しみもがくように美雪は床に倒れこむ。勿論、これは演技だ。 「遂に息絶えたか…。…いや、まだ氷の壁が残っている。生きているな。」 美雪の脳に、左足がもぎ取れるイメージを流す孝。 「あぐぅ!?」 短い悲鳴を上げる美雪。左足はイメージ通りにもぎ取れる。 「ふっ…このままいたぶるのも可哀想だな。ここは首の引きちぎれるイメージを流して、一思いに殺してやろう。」 孝が右手を美雪に向かってかざす。 「!」 美雪が顔を上げてこちらを見ている事に気づいた。 美雪の顔は…笑っていた。 彼女の口が小さく動く。 「ミ・ツ・ケ・タ」 「ッぐぎゃあぁぁ!?」 上がる悲鳴、上がる血飛沫。 全ての幻が消えていく…。 「そんな所にいたのね。本体さん。」 五体満足の美雪が、空間の隅っこに目を向ける。 そこには胸から血を垂れ流す孝がいた。
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