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「貴方自身の幻術よ。私が跳ね返したの。」
混乱する孝に、美雪は答えを示してやった。
彼女の前に淡い光を放つ透明な壁が張られていた。
「氷鏡壁。いかなる攻撃をも反射する私の術よ。」
「バ、バカ…な。俺は自身の幻術に掛かったというのか…!」
「本来ならば精神が崩壊する程の幻…。貴方の精神が無事なのは、幻術を使う故に耐性があったからのようね。」
氷鏡壁を解いて、美雪は孝を見据える。
「これで得意の幻術も効かない。貴方には本当に何も残ってはいないわ。」
だから、大人しく退いて頂戴と、美雪は続けた。
「お、おのれ…!このまま、このまま引き下がれるモノかぁ!」
短刀を取り出して、孝は美雪に襲い掛かる。倒せぬのであれば、せめて刺し違えようという腹なのだろう。
「残念ね…。死にいく貴方へのせめてもの手向け…私の奥義をもって葬りましょう。」
右手に先程とは比較にならない程の冷気が宿る。
流麗な動きで、美雪は右手を下から上へと振り抜いた。
「氷翔裂破!」
孝の周囲を強烈な冷気が包む。
「なっ!?」
孝が驚きの声をあげたその刹那ー
冷気を纏った大きな竜巻が生まれた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁッ!?」
孝は一瞬で竜巻に飲み込まれ、天高く舞い上がった。
竜巻は数秒ほど経った後、涼風となって消え失せ、凍死体となった孝が床に叩きつけられた。
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