日常

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「ほらこれ…返すね」 ぶっきらぼうな声をかけてくるのは同じクラスの紀乃悠子(きのゆうこ)だ そういえばこの前、偶然にも教室で猪原から読んでみろ! と、ほぼ強引に貸された小説を持っていたところを紀乃に見つかってしまい 紀乃がこの小説に興味を持ってしまったことから自分たちの関係は始まった 最初は話すつもりすらなかった 小説が読みたければ猪原に借りるといい と、伝えてさっさと会話を終わらせようとしたが、紀乃はしつこく自分に詰め寄ってきた だから俺がこの本を持っているのではなく、猪原が持ち主… それを教えるだけで一時間はかかった気がする 何でそれほどの時間を消費しなければならないのか、その意味を理解するまでさらに時間がかかった 天然なのだろうか、人は見かけによらないという言葉が生まれたのもそういう人がいるからだ、とあとで痛感した 紀乃の見た目はお譲さまのような感じ 高嶺の花の女の子…男の子なら誰でも話しかけたいと思うようにさせる容姿だし 性格もお譲さまを誇張させる高飛車な感じではなく、優しい 誰でも話すし、文芸部で自分の作品を書いている どちらかというとおっとりした感じだ
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