序章:葉月と心

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んー、お腹すいた。 新谷ってご飯どうしてるんだろう……。 親あまり帰ってこないって言ってたけど。 そう思って部屋着に着替えてからリビングに行ってみる。 新谷の服全部可愛いからびっくりしたよ。 もうちょっと可愛い系じゃないのもあるかと思ったのに。 と思いながらリビングにつく。 テーブルの上を見るとカップ麺が置いてあって手紙が添えられてる。 『心へ いつもごめんね、今日も忙しくて帰れないと思う。 お昼頃帰って来れたからカップ麺を買っておきました。 あと、土日も仕事で帰ってこれないかも 本当にごめんね』 それを見て涙が溢れてくる。 お母さんに会えないなんて……。 悲しすぎる。 私がこんな立場だったらって思うと……。 新谷に少しだけ家庭事情は聞いた。 お父さんは早くに他界しちゃってるって。 だからお母さんは帰って来れない。 新谷を幸せに過ごさせるために、って。 でもこれが幸せなの? 確かにお金はある。 普通の学生としては多いくらいのお金が入ってた。 けど、貧しくても家族が一緒に過ごすのが幸せじゃないの? 私が普通だと思ってたことは恵まれてたことなんだ。 推測でしかないけど。 新谷が勉強できるのって家に帰っても誰もいないから? 勉強しかすることがなかったからじゃないかな? 新谷の部屋には娯楽が何もなかった。 強いていえばぬいぐるみくらい。 あれはきっと寂しさを紛らわすもの。 新谷って勝手に恵まれてると思ってた。 でも、新谷は本当は全然恵まれてなかったんだ。
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