序章:葉月と心

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『それに、告白されたって……。 好きな人に好かれてないんじゃ意味ないです!!』 好きな人に好かれてなきゃ、か。 それもそうかも。 「好きな人、誰なの? 私で良ければ協力するよ」 『本当ですか!? いや、でも……。 うーん……』 「ほら、今は新谷の身体なわけだし。 新谷の好きな人が新谷を好きになってくれるように動くことは出来るし」 何か面白そう。 それが本音。 人気者の新谷が普通の恋する乙女なんだっていう事実を確かめたい。 特別でも、普通なところを。 『だ、大丈夫です!! それより、明日どうしましょう』 話題を変えてきた。 もうこの話はされたくないのかな? というか明日? あ、そうだよね。 明日どうしようか。 「まあ、明日休みなのが不幸中の幸いだよね。 学校だったらやばかったかも」 『そうですね。 葉月ちゃん、友達多いから。 一人くらい気付くひといそうです』 いや、バレるとしたら私でしょ……。 新谷ファンは新谷のこと知り尽くしてるって言っても過言じゃない。 だからちょっとしたことでもきっと気付かれる。 それに新谷にはすごく仲のいい野田紫苑ちゃんっていう子がいるし。 紫苑ちゃんは委員長でみんなに優しい。私も例にもれず優しくしてもらってる。 新谷とは休み時間に毎回話してるくらい仲がいい。 何を話してるかは分からないけど2人ともすごく楽しそうなんだよね。 「この土日で戻ればいいけど」 『そうですね……。 明日も色々試しましょうか』 「うん。 じゃあ明日会おう。 どこに何時にする?」 集合場所は大切だよ。 決めてないと明日大慌てになるから。 『9時に、公園でどうですか?』 「うん、了解。 じゃ、また明日ね」 『はい、また明日!!』 嬉しそうにそう答えて電話を切る新谷。 土日誰かと遊ぶのに憧れてたのかな? 新谷ってみんな敬遠しがちだから仲のいい人って紫苑ちゃん以外はあまりいないんだよね。 というか、紫苑ちゃん以外見たことないかも。 人気すぎる故の孤独。 相反する筈の事象。 なんて、なんだか格好よく言ってみた。
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