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「勘弁してください」
「結局拓真さんが土下座してますね。その行為は全くの無意味ですよ?」
時折笑ってみせるだけでなんの進展も得られていない。
俺は望むばかりでなんの対価も見せられていない。
交渉になっていないのは承知しているが、彼女が譲歩を全く出してくれない以上は話にすらならない。
「拓真さんは私になにかお互いが納得するようなことを求めているんですよね?」
「そりゃあそうしてほしいです。けど俺はもう桃香が管理しているから無理なことは無理です」
「例えば真っ二つに拓真さんを切って半分はここにいるとかどうですか?」
なるほど、これだ。
俺が来てからずっと感じていた違和感。
小日向さんは俺と話しているようで全く会話できてない。
彼女は俺をなにか物として認識している節がある。
いやそれでもいいんだけどそこから解決の窓口を見据えることは俺には不可能。
「楽しいですね」
「え。なにがですか?俺は全く楽しくないんですけど」
見方によっては確かに俺は面白いだろうな。
狼狽え方が凄いし結構怯えているから動揺を隠せてない。
あり得ないぐらいさっきから言葉をかんでいる。
「拓真さんには借りがありますからもう一度橘さんを交えて話しますか?」
「よろしくお願いいたします」
「だから土下座なんてしたところで私の気持ちを動かすことができないんだからやらなくていいですよ」
笑顔でそう言われても困る。
小日向さんが強いところは主張を曲げてこないから戦いようがないしなにより話にならない。
結局のとこ俺が折れるしかないんだろうけど桃香を再度テーブルにつけられたのはデカイ。
穢い話だけど、桃香の知力を持ってすれば解決策なんて山のように出てくる。
小日向さんは確かに強力だが桃香をなめてもらっては困る。
幾度となく俺を救ってくれた女神と呼ぶにふさわしい。
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