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「私が来たところでなんの解決にもならないだろ。というか、連絡ぐらいしてくれないか?心配して吐いていたんだから」
俺の希望である桃香は既にダメージを受けていたわけだが、事情を説明するとグーで二発ほど殴るだけで許してくれた。
俺は彼女の知力と決断力を高く評価している。
なんなら桃香が小日向さんと話せば丸く収まる可能性すら秘めている。
俺が思わず頬を緩ましているのを彼女は見過ごさなかったけど。
「私は考えを変える気はありませんからね。拓真さんの今の顔で決心がつきました。不愉快です」
「拓真、状況は悪化したみたいだが、気のせいか?」
「くっ、今のは俺のせいかも」
これでは俺が足を引っ張っているみたいだ。
桃香はそれでもやってくれるだろうから俺はあえてもう口を開くのをやめる。
こんな暑い季節にも関わらずなんだか寒気が襲ってきている。
「小日向さんとか言ったか。拓真は私の彼氏であり家族だ。こういう風に付きまとうのはストーカーみたいなものだ。やめてくれないか?」
自然に、それでいて揺るがない意志の強さがある。
桃香には拉致されたところからスタートしたのだがそれはなかったことになるのか。
だがどういうわけか、俺は人に守ってもらうことになれていないから多分今顔が真っ赤になっている。
具合が悪くなるくらい桃香が好きになった。
恥ずかしくて顔をあげられず、俯きながら手で口元を隠している。
こんな風に言い切られると思わなかった。
さすがにこう言われると思っていなかったのか、小日向さんは返答がない。
正面から堂々としてくる桃香にかなうやつなんてのはいないと思う。
「そうですね。でも私はみっともないとも思いません。好きなのだからそれが叶わないなら報復する、それだけです。ただ助けられたことと、私があの時追い出さなければ…なんて後悔はありますし、貸しはあると思っています。だから上からしたを真っ二つに鉈かなんかで切っておいてってくれませんか?」
真顔で利己生前といってのける彼女に嫌な気持ちとは別に強いとも思ってしまった。
しかも鉈って……そんな漫画みたいに綺麗に切れないから地獄絵図が用意に出来上がってしまうぞ。
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