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「連れて帰ってきた意味がわからんぞ。拓真、なんなんだこれは?」
桃香はなんとも納得いかないという表情だ。
それはそうか、俺と小日向さんを連れて帰ってきたわけだし。
本当に俺の体に切る場所をマーキングし始めたときに泣き出してしまい俺は五体満足にここにいる。
しかし条件が合わず小日向さんを引き連れ帰ってきた。
まあ桃香が俺を哀れんで小日向さんの説得に付き合ってくれてるんだけど。
「………なにがおかしいんですか?」
小日向さんは少しだけ眉間にシワを寄せ、俺を睨み付けてきた。
感情が溢れだしたらしい。
状況的には全く良くなってないしダメなんだけど。
「い、いや桃香が小日向さんの説得に付き合ってくれるのが嬉しい。でも自分で解決しないといけないってわかるんだ」
小日向さんは俺を捨てた。
そう思っても例え三ヶ月程度の付き合いだとしても小日向さんもその両親も俺の家族ではあった。
それがとても邪魔をしている。
「こんなこと言うとおかしいと思うけど、桃香が見せてくれた母親の新しい家庭は子供が楽しそうに笑っていたのが悲しいけど嬉しかった。だから俺を捨てた両親は放っておいて欲しい。けどなにも差し出せない。俺はもう桃香の物だから。でも小日向さんにも俺は恩は感じているし感謝もしてる。君のいうことには頷けないけどそれでもし両親になにかあれば桃香に頼んで君を殺すし桃香になにか不都合があればやっぱり君を殺す。小日向さんにはそんなことはしたくない」
嘘偽りない気持ちだと思う。
和泉と同じぐらいには小日向さんが好きだと思う。
自分の親がとられると思ったらそうなるし、それにたいして謝罪してくれて俺の事が好きになったからここまでしてる。
それに内容こそあれだが最初から最後まで全く悪意を感じられないから困ってる。
だからここまで口にしといてなんだが、非常に心苦しい。
「わかりました。なら拓真さん、愛人でも構いませんよ」
「拓真、私は構わないぞ。とりあえず友達からスタートさせよう」
「え?」
そうだ、こんなカオスな話し合いが実を結ぶとは到底思えない。
というか、桃香はきっと愛人の意味を理解していないだけかも。
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