本編1章

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最近、目が覚めても嫌な気持ちにならない。 俺は世界に存在していて誰かに必要とされているからまだ生きている。 そしてそれはまだあっていないだけでどこかに居て待っている。 起きてからすぐにそう考えると不安にならないし納得もする。 今は桃香のため、橘のため。 それは俺が築いたであろう最後の砦なのかもしれない。 「俺が腕枕をしてもらうのはなにか違う気がするが、おはよう」 「したい方がする、しやすいほうがする、それでいいじゃないか。拓真、おはよう‥‥今日も格好いいな」 施設に居たとき、少しだけ引き取られていたとき、一人暮らししてたとき。 このどれよりも幸福に目覚めていると思う。 少なくとも桃香は俺の近くにいて俺のことを考えてくれている。 身内のように扱ってくれる。 「な、何故泣くっ!?」 「わかんないけどこの手が」 腕枕されているこの手がなんだか嬉しい。 桃香は俺をわかってるから優しくしてくれるし気を遣ってくれている。 そうだ、桃香に捨てられたら殺そうと考えるぐらいになってる。
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