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「そう怖い顔をするな。間接的に、だ。優秀な人材を引き抜いたり株を買い占めて実質的な経営権を握ったり、使えない奴はすぐに切る。それで職を失い最悪自殺とか無理心中する奴とかはかなり居る」
「…………な、なんだ……まあそれなら仕方ないでしょ」
この世は競争社会だ、馬鹿な人達は損をして優秀な人間は得をする。
そういうのはむしろどこの国だってそうだし当然の事だ。
「私はそうは思わない。だが私は父の娘でそれに口出しできるわけもない。だからそういう人間なんだ、と割り切っている」
「うん、それでいいと思うよ。俺がもし龍明さんの立場でもそうする。大事なのは成果で過程じゃないわけだし」
それでも俺はきっとなんだかその通りにできない気がする。
人間として備わっている同情や可哀想だという心がきっと邪魔になるからだ。
「無理だろ、君には…大体そんな人間なら私が好いているわけがない」
「わからないよ、俺も結構他人はどうでもいい派だし時には冷酷になったりする」
「なら確認しよう。拓真が嘘をついていないのかを」
そういうと彼女は携帯を取りだしどこかにかけている。
流暢なフランス語だ、俺でも聞き取れるし発音も多分完璧。
しかし聞き取れたところでフランス語を知らない俺には意味が理解できない。
でもサフェデュビアンって気持ちいいとかそんな和訳っぽい。
とすれば彼女の表情と口の動きから観察して和訳できるはず。
「気持ちいい、ああいうことするのは、ふふふ………なんだ、ただのセフレか」
「侮辱されてしまった、残念ながら許せない。頭を冷やしてこい」
容赦の無い蹴り、体が飛んだがドアがあるから大丈夫なんて思ったが無くて頭だけでも守ろうとした。
徐行運転とはいえアザと増えたのと折れている左腕がまた痛みを取り戻した。
俺はもう絶対に不用意な発言はやめようは絶対に言わないと胸に誓った。
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