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「今の私と君は恋人未満友人未満の状態だ。あまり私をおちょくるようなら容赦はしないぞ?」
「その言葉、魂に刷り込みました、サー」
気合いで立ち上がり車から降りた桃香に敬礼。
憶測を口にするなんてどうかしていた、しかしついふざけてしまうのも特技ではある。
どうやら相当に先程の発言が気分を害したらしい、車に乗り直し行ってしまった。
清純派っぽいから遊んでいると俺に思われるのが不愉快だったようだ。
置かれた自分の鞄を拾い歩くがどうしても遅くなってしまう。
体が、また傷んだからだ、そうに違いない。
「うわ、肘が結構擦りむけてるし」
時期はまだ六月だが衣替えの期間だからまだ冬服もありだがもう切り替えたのが失敗だったらしい。
結構な視線が集まっていたが、手を貸す奴なんていないし別に話し掛けられもしない。
クラスメイトならもしかしたら手ぐらい貸してくれたかもしれないし和泉なら絆創膏とかくれただろう。
残念な事に周りには他人だけ。
そしてその視線には差別的なものや哀れみも含まれている。
予測の範囲をでないけど学校の裏掲示板で俺が話題になって素性とかが明るみに出たんじゃないかな、と思う。
人気で美人な生徒会長と学力そこそこな施設育ちの益荒男の恋愛。
学校中に広まるのは当たり前だししょうがないことだ。
しかし飽きやすいのも日本人だ、一ヶ月ぐらいしたら次の話題に移るだけ。
「……あっつ」
行きはずっと車で校門前までだったので体がダルくなる。
熱いし体痛いのはあの人のせいなのにここに捨てられたし。
不満が出てくるけどハッキリと桃香に嫌だから元の生活に戻してくれ、と言えないのはきっと今の方がいいからだろうな。
そりゃあそうか、何にもしないで勉強するだけの楽な生活だもんな。
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