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でも弁当というのは嬉しい自分も居る。
生まれて初めてだったし、なにより家庭の味というのが体験できるのは嬉しいものだ。
「私はな、物事はハッキリとさせるべきだと思っている。やっぱり一度話してみるべきではないか?」
隣に腰掛ける桃香は足を組み偉そうにこちらを見据えている。
最近思うけど時々偉そうな感じは自分に自信があって、間違っていないという考えからだ。
「じゃあ桃香は自分の親になんでこんなに自分は背が高いんだ、とか胸が小さいんだ、とか言えるか?」
「確かにそれは言えないな。だがひとつの考えだと頭の隅にでも置いておけ」
俺の事を思ってくれる数少ない人の言葉だ、気にとめておくことにしよう。
昼休みの時間も無くなりかけている。
席を立ち、弁当のお礼を言って教室に戻ろうとしたが服を掴まれた。
振り向くと桃香はこちらを見て涙を浮かべている。
な、なんだ……もしかして俺か?俺が泣かしたのか?
うん、それ以外ないよな。
「あ、あの……ごめん、とりあえずごめんなさい」
「や、やっぱり背丈が大きいとダメか?気持ち悪いか?」
「い、いやいや俺はそうは思ってないよ。ただ桃香が一番気にしてることだから比較に出してみただけだよ」
気安く頭を撫でてあげるとか出来ればなぁ、なんて俺にはちと荷が重い。
やはり発言は選ぶべきだったな。
「嘘だな。なら言ってくれ、私を娶ると……」
「それは無理。それとこれとは話が別だ」
「拓真はシビアだな、そんなところも将来性があると私はポジティブに受けとる。うん、私は良い妻になりそうだ」
なにやら自己解決してくれたようだ。
泣かせなかった、その事実を確認して俺はしばし妄想にふける桃香を後にした。
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