第一話・好転なのか、なんなんだ?

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教室に入り、席から近場のクラスメートと挨拶を交わす。 親しくしてるのは和泉ぐらいだがまあ知り合い程度ならある程度はいる。 施設暮らしで親がいない、そんな奴に同情こそしても深くは関わりあいたくはない、そう思ってるやつばかりだから俺もクラスメートという枠内の接し方しかできない。 「錦織、ハムエッグパン風味のガム食べるか?」 「いらねえよ、それより今日の昼はどうする?」 「たまにはさ中庭で優雅に学食だろ、今日は朝から定食の口だ、痛っ、なにすんだよ」 厚かましさとなんかでとりあえず油断していたので太もも辺りをつねってみた。 しかし中庭は競争率が高い、席も限られているしな。 和泉をこの二階の教室から投げれば良いか。 「まあなんでもいいよ、時間まだあるし屋上で景色でも眺めてくるよ」 鞄とかは既においてあるので財布だけポケットに入れて行くことにした。 空とかなんとなく眺めていると安らぐんだ。 テレビとかも旅番組は一番好きだし。 なんか広大な空を見ていると自分のちっぽけな悩みとか馬鹿らしく思えてくるし。 屋上、と言っても教室は二階しかないそんなに高くないんだが整備されているし小さな庭みたいなのがあったりベンチがいくつか存在している。 昼になると人気の場所だが、他では閑散としている。 当たり前か、季節は夏に近いわざわざエアコンの効いた教室を捨てこんな炎天下に足を運ぶやつなんていないか。
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