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まあそんな強くないし敵は二人だが勿論引き分けに近いものだ。
先に向こうが見切りをつけて行ってしまった。
ふっ、あとちょっとで病院送りだったな、俺が……気が抜けて座り込んでしまった。
「君、大丈夫か?」
「………まあそこそこは」
渡されたハンカチを素直に受け取り顔を拭った。
ちきしょう、鼻血が出てやがるぜ。
「洗って返します」
「いやそのままで大丈夫だ、何故なら私の宝にする」
「?まあいいや、ありがとう」
よく聞こえなかったがそのままで良いらしい、お気に入りだったのかもな。
あー、フラフラする、今日もバイトなんだけどなあ。
「いや礼を言うのは私の方だ、ありがとう。名前は確か錦織拓真だったな」
「ん、よくご存知で……つうか適当な事いって切り上げればいいんじゃないの、明らか相手は橘さんに何かする気だったし」
「生徒会長だからな、意見を聞くのは当然だし不満がでるのは私がだらしないからだ。それに叩かれたりするのは慣れている」
会長は武術もたしなんでいる人だったような気がする。
でもきっと立場とかそう言うので駄目なんだろうな、やり返すのは。
「そんなのは慣れるとかじゃないだろ」
「そうだな、次からは君の言うようにしよう。だが助けられて嬉しかった、ありがとう」
少し見方が変わったかも、些細な出来事なんだけど初めて触れあったからか。
それよりもう時間だ。
「いや、それより初対面なのに馴れ馴れしくてごめんなさい。じゃあそろそろ授業だし行くわ」
言葉少なめにその場を後にした。
「私の白馬の騎士は錦織拓真だったか」
俺には届くはずのない呟きだったことだろう。
一方の俺はせっかくの空眺めてのほほんタイムを邪魔され酷く不愉快になり和泉の新しい消しゴムに俺の名前を書いてやった。
あれもし遣いきったら両想いになるとかいうジンクスみたいのって…………ないか、あったとしても所詮はただの作り話だからな。
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