優しい嘘

○同・201号室・リビング（夜）
　　　柱を背にして缶ビールを
　　　飲んでいる木場と野嶋。
木場「……なぁ、実。巻原さん
　とは付き合ってるのか？」
　　　風鈴の音が響いている。
野嶋「……誠一さぁ、夏ちゃん
　のこと知ってる？」
木場「夏ちゃん……誰？」
　　　野嶋、木場を直視して、
野嶋「小雪さんの子ども。もう
　すぐ2歳になる……小雪さん
　は、未婚の母ってやつだ」
　　　木場、缶ビールを落とし
　　　中身が床にこぼれる。
木場「俺は……とんでもない罪
　を犯したんだ！」
　　　木場、自分の頭をかきむ
　　　しる。
木場「俺の子どもだったら…」
　　　野嶋、こぼれたビールを
　　　拭きながら、
野嶋「……誠一、知っていたの
　か？小雪さんがお前の妹だっ
　て」
　　　木場、ひざを抱えながら
木場「小雪の部屋に行った時、
　額に入ったハンカチを見たん
　だ。「こゆき」って刺しゅう
　がされてたよ……」
　　　木場、机の引き出しから
　　　「せいいち」と刺しゅう
　　　されたハンカチを取り出
　　　す。