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――何とか彼をベンチに横たえると、今日は運良く持っていたハンカチを水で濡らして、額に当ててやった。
「…平気ですか?」
やはり言葉は発っさなかったものの、形の良い唇で弛く弧を描いてくれた。
――それにしても、さっきはうつ伏せで気付かなかったが、彼はかなり美形だと思う。
鼻筋が通っていて、切長の目。瞳は色素の薄い茶色で、髪も同色だ。肌も色白で、背は高く、手足もスラリと長い。
外国人、若しくはハーフなのだろうか?
とにかく、物凄い格好良い。
「………あの…」
「Σはいっ!!?」
いきなり声を掛けられ、心臓が跳ねた。
…見つめ過ぎて変な人だと思われたろうか?
「…そんなに、珍しい?」
……………何が?
「…た、確かにその容姿は珍しいなぁ……って思いました…。あの、不快に思われたなら…ごめんなさい。」
「別に不快なんかじゃ無いけど…、凄い見つめられてたから何かなぁ…ってね」
この容姿で声まで格好良い。…新手の詐欺かしら?…………なんか、不本意だけど騙されてみたいかも。
そんなアホな事を考えていたら、彼が額のハンカチを押さえながら起き上がった。
「……座れば?」
どうやら、つっ立ってた私に座る場所を作ってくれたらしい。…病人なら其れらしく寝ていれば良いのに。
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