228人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…、何で倒れてたんですか?」
ベンチの端で何と無く身を小さくしながら聞いてみた。
彼は、あーとか言いながら空を見上げて、少し考える様に唸って、それから答えてくれた。
「貧血気味でさ、たまに倒れたりするんだ…。今日みたいに日差しの強い日は特に。」
吸血鬼見たいだろ、なんて笑って見せてくれたけど、なんだかそれがヤケに笑えない事の様な気がした。
この歳にもなって、吸血鬼を信じてる訳じゃない。でも、嘘事だとも言い切れない自分が居る。
一端その考えに捕われたら、ヤケに彼が恐ろしく見えた。
人はいつだってそう。自分とは違うモノを受け入れられないから。
「あ、あのっ!私、此れから用事があるので帰りますっ!!そのハンカチは差し上げますから!さようならっ!!」
とにかくその場から、彼から離れたかった。だから、言うだけ言って走り出したのに、なんでこんな時に限って慣れない靴を履いていたんだろう。
慣れないヒールで、しかも公園は舗装されてなくて、見事にコケた。
――しかも、自分を恨みたくなるくらい酷く間抜けなコケかたで。
最初のコメントを投稿しよう!