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その時点で、黙って服を着て帰れば良かったのだが、
それは『負け』を認めたようなものだ。
それだけは、あたしのプライドが許さない。
あたしは至って冷静を装って
「それって愛人としてお金とか頂けたりするんですか?」
と聞くと、
「ん?まぁホテル代やらデート代やらは出すつもりだけど、何?姫菜ちゃんはお金目当てなの?」
と、軽蔑した目でこっちを見てきた。
なんなんだその目は。
軽蔑したいのはこっちだ、どう考えても。
「だって愛人って、一般的にそういうものじゃないですか。」
でもあたしは平静を装って、なるべく冷たく聞こえるように言った。
あたしは、落とせない男に興味なんてない。
気がある素振りなんて見せてはいけない。
すると、ヤツも急に冷たい声で
「僕に一般論を押しつけないでほしいな。」
などと言い放った。
なっ…
怒りのあまり声がつまると、突然抱きよせられて、
「愛しているから愛人。それでいいじゃん。」
と耳元で囁かれた。
「あ、愛してる?!誰が!?」
「僕が、姫菜を。」
そう言ってあたしを押し倒してきた。
「別に、付き合うタイプじゃないって言っただけで、愛していないなんて一言も言ってないよ。」
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