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英明が警察署の講堂に入り、真っ先に目に飛び込んだのは、ガタイの良い太田誠だった。
浮かない顔の捜査員が多い中、彼だけはまったくそんな素振りを見せていないからだ。
「おはようございます」
英明は後ろを振り返ると、安藤幹彦が笑顔で立っていた。
彼は英明の上司にあたるが、物腰は柔らかく、面倒見も良い。
おはようございます、と英明は返した。
「君の友達は明るいね」
安藤は誠を指差した。
どうやら、関係は知られているようだった。
「まあ、そうですね」
英明は素っ気ない返事をした。
正直、誠に関わりたくない気持ちもあった。
「良いことだよ。みんな、この事件の全貌がかけらも見えてなくて、苛立ってる。彼はその様子はない」
「あいつは、単純馬鹿なんですよ」
「そういう言い方は可哀相だよ。彼だって、立派な警察官だ」
捜査本部開設の準備が整った。
指定された席に、英明は座った。
「隣だな、英明」
英明が隣を見ると、誠が腰を下ろすところだった。
どう答えようか、英明は迷ったが、ああ、と素っ気なく無難な返事をした。
安藤が二人に近寄った。
「さっき係長と相談して、坂本君には太田君と組んでもらうことにした。二人は腐れ縁みたいだし、何かとやりやすいだろ。何か問題はあるか」
「いや、俺はまったく」
誠は首を振り、英明を見た。
「頼むぞ」
「こっちこそ」
その後、多少の談話をしていると、急に周りの空気が張り詰めた。
係長などが、次々と入ってきていた。
雛壇に、全員が納まると、捜査会議が始まった。
会議は係長が進行役をし、進められた。
数々の報告から、事件の概要が少しずつ見え始めた。
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