悲しみ

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談話室という部屋に、美智子達は入った。 坂本と向かい合う。 「A駅の前にあるコンビニはわかりますか?」 美智子は語尾をあげながら、店名をあげた。 「そうです。午後の5時ごろ、息子さんはそのコンビニで急に苦しみだし、息絶えました。見つけたのは、そのコンビニでアルバイトをしていた青年です」 「なんでまた……そんな場所で?」 美智子は言った。 坂本は首を振った。 「正直、まだ何もわかりません。解剖の結果が出てからでないと」 ふざけるな、と言いたい気持ちを、美智子は抑えた。警察ともあろう者が、事件の全貌も掴めてないのでは話にならないじゃないか。それでは、純平も救われないじゃないか。 「……息子は、コンビニで何かを買ったんですか?」 「いえ、雑誌を立ち読みしていたようです」 坂本がその雑誌の写真を二人に見せた。 その雑誌は、美智子も見覚えがあった。週刊雑誌として、中高生に人気のあるものだ。 「……これを読んでいたんですか?」 巧は訊いた。 「はい、だいたい25分くらい読んでいました」 「つまり……それに毒が塗ってあったとか?」 「その可能性もあるでしょうが、まだはっきりとは」 坂本は、純平の生年月日や、日常での生活、交友関係などを訊いてきた。 美智子は生年月日などはしっかりと答えられたが、日常の生活の様子などでは言葉が詰まった。 「何分、思春期でしたし、自分の部屋にこもってることが多かったもので」 交友関係も、言葉に詰まった。 高校生という時期は、親を煙たがるものなので、と言い訳をした。 坂本は顔色を変えずに、手帳に何かを書き続けた。 「あの、何かわかりましたか?」 美智子は思わず聞いた。 「ええ、参考になりましたよ」 質問の返答になっていない。つまり、何もわからなかったというわけか。 その後も、質問は続いた。
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