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芝生が敷き詰められていて、季節によって花が植え替えられ、真ん中にはサモトラケの二ケのレプリカが建っている。 そんな中庭で、俺はあいつを見つけた。 「今日もいるね。」 パンをかじりながらそう言った圭人に、俺は返事もせずぼーっとそいつをみていた。 昨日も、一昨日も。 同じように壁にもたれていた、名前もわからないようなやつを。 「そんなに気になるなら話しかけたらいいのに。」 「…うるせー。」 それができたらとっくにしている。 自慢じゃないが、俺は勇気のない男なのだ。 「好きな子が泣いてるのをほっとくなんて、山ちゃんヒドい。」  
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