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「なんの用だろうね? メノウさんはまだ来ないし……」
掌に再び水球を作って弄んでいたシュリンだったが、なにか思いついたようにリクラムを見た。
水球が軽い音を立てながら弾けて気化する。
楽しげな光を見せるシュリンの瞳に、リクラムは嫌な予感がした。
「メノウさんが来るまで組手でもしてよっか?」
「え!?」
リクラムはシュリンの発言に驚いた。
一般的に、砕刃師の組手とは肉体強化を使わないで行うものを言う。肉体強化に頼らない体の使い方を学ぶことが目的であり、これができると肉体強化の効率が良くなる上、体にかかる負担も軽減できる。
(いくらなんでもシュリン相手に組手は……)
リクラムは反応に困った。
「あー! 今、私じゃ相手にならないと思ったでしょ?」
「い、いや、思ってないよ」
リクラムの様子を見たシュリンは人差し指を突き立てながらリクラムに近寄った。リクラムは両手を軽く上げて後ずさる。
リクラムはどうしたものかと悩んだ。組手なんかするよりは単純な戦闘訓練か、連携の訓練をした方がいいのではないかと思う。
そんなリクラムの心中を読んだかのようにシュリンは頬を膨らませる。
「いいわ。私の実力を見せてあげる。そこそこ強いんだから!」
そう言うと、シュリンは突如蹴りを放った。
「ちょ、ちょっと待って!」
的確にこめかみを狙い撃ちするシュリンの蹴りに驚きながら、リクラムは頭を下げてそれをかわした。
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