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「そんなこと言ったって……うわっ!」
シュリンの放った鋭い前蹴りをリクラムはすれすれで避けた。
シュリンは休むことなく続けざまに流れるような攻撃を仕掛けていく。驚くべきはその平衡感覚だった。空振りさせようが受け止めようが、普通なら倒れるのではないかという体勢から次の一手が放り込まれてくるのだ。しかもそれが的確に人体急所を突いてくるのだからたまったものじゃない。
水月への掌底。首元への手刀。こめかみへの蹴り。顎先への裏拳。
シュリンは舞い踊るかのように、要所要所に適切な形で攻撃を打ち込んでくる。リクラムはその流れるような動きに思わず関心してしまった。綺麗だとすら思った。
しかしそんな悠長なことを考えている暇はない。
(どうしよう……)
次々と繰り出される攻撃をなんとか躱しながらリクラムは困り果てた。
正直に言えば、反撃の隙はある。流れるような一連の動きの中にも僅かながらの技の繋ぎ目があるし、たまに混ざってくる回し蹴りや飛び蹴りに関してはさらに隙が大きい。踊っているかのような軽業の数々は驚嘆の一言に尽きるが、やはり一瞬の隙が命取りとなる実戦には向いていないのかもしれない。
(それでも、並の人間じゃこの攻撃は躱せないだろうな……)
顔面に迫ってくる拳の連打を首の動きだけで流しながらリクラムは思った。
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