2-2.シィーラの刃

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それでもリクラムには反撃が可能だ。隙を見通しながらもリクラムがそうしないのには二つの理由があった。  一つは単純にシュリンに拳を向けたくないということだ。いくら訓練とはいえ、女の子、しかもシュリン相手に攻撃を加える気にはどうしてもなれなかった。 (学園の模擬戦でだって女の子相手はやりづらかったのに……)  対人での模擬戦では無敵に近いリクラムだったが、女子相手のときは本当に苦労していた。魔法を次々と放ってくる者相手に、怪我をさせないよう細心の注意を払いながら戦うのは骨の折れる作業だった。  本気でやっている人相手に手を抜くという行為がいかに失礼であるかはリクラムも重々承知していたが、それでもどうしようもなかった。  止むことのない攻撃を捌きながら、リクラムはシュリンの様子を窺った。  先ほどの楽しそうな様子とは打って変わって不機嫌そうに見える。攻撃が当たらないこと以上に、リクラムが反撃しないことに腹を立てているに違いなかった。  シュリンと目が合った。その瞬間、シュリンはリクラムを睨みつけた。同時に全身の体重をのせた右拳を思いきり突き出した。 「くっ……」  リクラムは両手でそれを抑え込んだ。今までの、次に繋げるための鋭さ重視の攻撃ではない。威力と重さに重点を置いた単発の拳だった。  シュリンはなおもリクラムを睨みつける。 (本気を出せってことね……)
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